どうも!講師のHouichiです。今回は「制作者にとって残る知識と残らない知識」というテーマで話していきます。
「制作者にとって何が“残る知識”で、何が“残らない知識”なんだろう?」
制作の勉強を続けていると、どんどん情報が増えていきますよね。
例えば普段制作では、講師から様々な助言や描き方のハウツー、本、、SNSのメイキング動画…。
でも、時間が経っても自分の軸として使い続けている知識もあれば、
「あれ?あの課題のコツなんだっけ?」と取りこぼしているのもあるはずです。
ここでは、制作者にとっての「残る知識」と「残らない知識」を整理しつつ、
どうやって“残る側”を増やしていくかを考えてみましょう。
残る知識とは何か
①抽象度が高く、いろんな課題に応用できるもの
②その画法・画材・分野で“なくてはならない”ルール
③実際に失敗したことや、達成した経験
残らない知識とは何か
①その課題でしか使えないもの
②具体的な行動だけのアドバイス
情報を“残る知識”側に変えるコツ
①その都度「一段、抽象度を上げてみる」
②自分の言葉でメモしておく
③「この知識はどこまで通用するか?」を考える
まとめ
残る知識とは何か
①抽象度が高く、いろんな課題に応用できるもの

たとえばデッサンで学んだ「光源を意識して、明暗を整理してから描く」という考え方。
これは石膏像でも静物でも人物でも、さらには色付きの作品でも使えます。
こういう 抽象度が高い知識 は、一度腑に落ちると、モチーフや画材が変わっても何度も再利用できるので、
時間が経っても残りやすいです。
- 「複雑な形は、大きな塊→中くらいの塊→細かい形の順で捉える」
- 「見る人の視線をどこに集めたいかを決めてから構図を組む」
こういう“考え方のルール”は、一枚の絵に限定しないで、制作全体を支えるOS(基本)みたいな役割をしてくれます。
このOSがあれば、モチーフに惑わされたり、見たままに描いてパッとしないということがなくなっていきます。
②その画法・画材・分野で“なくてはならない”ルール

もうひとつ残りやすいのは、「この分野をやるなら絶対に外せない」という種類の知識です。
- 油絵なら「下地との相性」「油分の比率」
- 日本画なら「膠の扱い」「紙や絹の張り込み」
- アニメーションなら「フレーム数と動きの滑らかさ」「キーポーズと中割りの役割」
みたいな、“その画材・分野の基礎体力”になるルールですね。
これも、一度ちゃんと理解して経験と結びつくと、その分野で制作を続ける限りずっとついてきます。
③実際に失敗したことや、達成した経験

そして何より強く残るのが 自分の失敗と成功の体験から得た知識 です。
- 「時間配分をミスって最後の仕上げに手が回らなかった」
- 「資料をちゃんと集めてから描いたら、説得力が一気に上がった」
- 「描き直しを怖がらずに、思い切って構図を変えたら良くなった」
こういう “痛み” や “うまくいった快感” をともなう知識は、頭だけじゃなく体にも染み込むので、忘れにくいんですね。
講評で言われた一言が刺さって、何年も残っていることもありますよね。
僕自身もずっとモヤモヤしてたことが先生の一言で一気に晴れたり、制作の中でふと気づくことがよくありました。
デッサンで言えば、中級者ぐらいだった時に、タッチの丁寧さにすごくこだわっていたのですが、
どうしてもスピードが上がらずに苦戦していたところ、
先生が適当だけれど、数手先を読んだ粗描きで、瞬く間に仕上げていったのを覚えていて、
目から鱗だったのを覚えています。
残らない知識とは何か
①その課題でしか使えないもの

逆に、すぐ薄れていきがちなのが、「その課題専用」の細かいテクニックです。
- 「このモチーフ配置なら、右上をもう3cm空けた方がいい」
- 「この石膏像の鼻筋は、ちょっとだけ長めに描いた方が映えるよ」
その課題をクリアするには役立つけど、モチーフが変わるとほぼ同じ形では二度と出てこないタイプの知識。
こういうものは、“型”として抽象化できない限り、記憶に残りにくい です。
本当はここから「なぜ3cm空けたらよく見えるのか?」まで考えて、
“余白のバランス”という抽象度まで引き上げられれば残る知識になるのですが、
そこまでいかないと「そのときの小ネタ」で終わりがちですなんですよね。
②具体的な行動だけのアドバイス

もうひとつ残りにくいのが、理由のない「こうしときな~」系アドバイスです。
- 「とりあえずここは濃く塗って」
- 「輪郭は鉛筆Bで描いて」
- 「背景はグレーで塗りつぶしておけばOK」
こういう 具体的な行動だけのアドバイス は、その場では助かるけど、
「なぜそうするのか」がわからないので、次の課題で応用しづらいです。
結果、時間が経つと「なんかそうやってた気もするけど…まあいいか」と、記憶の外に押し出されてしまいます。
情報を“残る知識”側に変えるコツ
じゃあ、どうすれば日々の授業や動画から得た情報を「残る知識」に変えられるのか。
①その都度「一段、抽象度を上げてみる」

アドバイスをもらったときに、
「これは、もっと広い言い方をするとどういうルールなんだろう?」
と一歩引いて考えてみる癖をつけると、残る知識になりやすいです。
僕はよくこの方法を活用していました。すこし時間はかかったけれど、その分忘れにくい、骨太な知恵になりました。
例)
「このモチーフはもう少し上に配置して」
→ 抽象化すると「重要なものは画面の中心より少し上に置くと安定感が出やすい」
→ さらに「大事な要素の配置によって、画面の重心が決まる」というルールに。
ここまで言語化できると、次の課題でも「今回の重心どこだっけ?」と自分で考え始められます。
②自分の言葉でメモしておく

ノートでもスマホでもいいので、
- その日に気づいた「抽象的なルール」
- そこに至った「具体的な失敗・成功のエピソード」
をセットでメモしておくと、知識がどんどん“自分の財産”になっていきます。
例)
- ルール:明暗は「一番暗いところ」「一番明るいところ」を最初に決めると迷わない
- 体験:今日はそれを決めずに描き始めて、途中で全体がグレーになり、時間オーバーした
こういう記録は、見返したときに「そうそう、あのときミスしたんだよな・・・」
と感情も一緒に思い出せるので、定着力が上がります。
③「この知識はどこまで通用するか?」を考える

新しい知識を得たとき、
「これは、この分野だけ?それとも他の分野・画材にも応用できる?」
と広がりを確認してみるのも大事です。
- デッサンで学んだ“形の簡略化” → キャラクターデザインでも使えるかも
- 日本画で学んだ“余白の美学” → グラフィックデザインのレイアウトにも影響しそう
こういうふうに、頭の中で「橋渡し」をする習慣をつけておくと、
“残る知識”のネットワークがどんどん広がっていきます。
まとめ
制作者にとっての「残る知識」と「残らない知識」をざっくり整理すると、こんな感じです。
- 残る知識 は
- 抽象度が高く、いろんな課題や分野に応用できるもの
- その画法・画材・分野で欠かせないルール
- 失敗や達成のリアルな体験とセットになっているもの
- 残らない知識 は
- その課題だけでしか使えない、局所的なテクニック
- 「とりあえずこうしとけ」という、理由のない具体的行動だけのアドバイス
日々インプットしている情報も、「なぜそうするのか」「どこまで応用できるのか」
を意識して一段抽象化してあげると、“残る側”に変わっていきます。
制作の勉強は、量をこなすことももちろん大事ですが、
「どんな知識を残すか」「どう残すか」を意識すること で、成長スピードがかなり変わってきます。
ただ技術を集めるだけじゃなくて、
自分の中に“長く使える知識の土台”を育てるイメージで、日々の制作を振り返ってみてください。
最後まだありがとうございます。