実技を伸ばす秘訣は「リサーチ力」にある

実技を伸ばす秘訣は「リサーチ力」にある

どうも!講師のHouichiです。今回は「実技を伸ばす秘訣はリサーチ力にある」というテーマで話していきます。

描く量や時間は大事。でも、同じだけ手を動かしても伸びる人と伸び悩む人がいます。

違いを生むのが「リサーチ力」。受験校、作品や技法、作家、素材を“調べ、比べ、言語化し、

次の制作に落とす”一連の力です。

ここでは、なぜリサーチが実技を伸ばすのか、そして実際にどう進め、

どう整理整頓すれば成果に直結するのかについて話していきます。

理由:鍛えるべき「方向・量・質」がわかる

上達は闇雲な反復では起きません。

方向:どこを伸ばせば合格点・作品の説得力に直結するかを、過去課題・受賞作・

展覧会レビューから逆算できます(例:京都市立芸大デッサン=構造把握とエッジ精度に比重、

構成のダイナミズムなど)。

受験生はとにかく合格作品や課題作品を毎日見ることで

見識を鍛え、実技でスムーズな上達を目指すことができます。

:合格者の制作枚数やプロセス(構図案→本制作の比率、下地実験回数)を知ると、

練習の“必要量”が粗密なく見えてきます。

実際今まで指導してきて、デッサンではおおよそ100枚で一連の流れが掴め、

飲み込みが早ければ、合格圏内に入ることができるでしょう。

200枚描けば合格がかなり近くなってきます。京都市立芸大の色彩であれば大小問わず50枚以上

立体50個以上ほどは必要になってきます。(実際はスケジュール上の都合や得意不得意でバランスを変えていきます。)

なぜこの比率なのかといえば、デッサンの枚数があれば、イメージを形にする力が付くので、色彩と立体もある程度ショートカットができるからです、そのためデッサンが重要になってくるわけです。

:良作の判断軸(形の正確さ/面の繋がり/光の設計/色の温冷/素材感の統一など)を抽出し、

自作チェックリストに変換できます。結果、同じ1枚でも密度の高い学習が可能になります。

リサーチをするときに意識したいもの

1)目的を明確にする

「何のために調べるか」を1文で書き出します。


例)「デッサンで“面のつながり”を改善する、構図と筆圧管理を学ぶ」。


目的が決まると、資料の当たり外れがはっきりし、収集が短時間で濃くなります。

検索語も具体化し、無駄な情報を切れます。

しかしながら、実は大事でかつ細かい疑問や要素はネットにまとまって見つけることが

できないので、授業での講評内容や学校ごとに必要な実技の参考作品を見つつ、

次の考え方を持つことが重要になってきます。

2)仮説を立てる

調べる前に“小さな答え”を仮置きします。


例)「面がちぐはぐなのは、基準光を決めずに中間調を塗り足しているからでは?」

→この仮説を検証するために、優れた作例の“光源の図解”を模写してみる。

外れたら仮説を更新。仮説→検証→修正のリズムが、リサーチを“作業”ではなく“学習のループ”に変えます。

3)偏らず、いろんな情報から得る

多層ソースを意識しましょう。

  • 視覚資料:展覧会、合格再現作品、巨匠の素描。
  • 言語資料:批評、作家インタビュー、合格者の声、技法書、課題講評メモ。
  • 体験資料:実物鑑賞、デモンストレーションを見る、先生や先輩へのヒアリング。
    同じテーマを3タイプのソースで当てると、思い込みが剥がれ、再現性のある理解になるんですね。

リサーチした情報を「整理整頓」することが大切

集めっぱなしは“情報の肥満”です。実技に効かせるには、選別→要約→指示化

“使える形”に落とします。 メモ帳を持っておくと良いですね。

A. 選別(捨てる勇気)


目的に合わない画像・引用は容赦なく外す。似た作例はベスト3だけ残すと効果的です。

フォルダは「①基準(最良)/②準基準/③参考」に三段階で整理。

B. 要約(90秒で読み返せる程度)
各資料につき、

  • 学びの要点(最大3行)
  • 使う場面(構図/下地/描き出し/仕上げ 等)
  • 注意点(失敗例・やりがち)
    をテンプレで記入。長文は“キーワード+短文”に削る。

C. 指示化(次の一手に変える)
要点をチェックリストに落とす:

  • 構図:例:主要比率は2:3で安定?ヌケの方向は手前→奥に通っている?
  • 光:主光源の角度を決め、影の最暗部は1箇所に限定したか?
  • 形:あたりの時点で全体の印象と角度は合っているか?
  • 仕上げ:質感の明確さは「強/中/弱」モチーフごと整理したか?
    制作前に余裕を持って確認し、制作中は中間チェックを忘れず、終わりに再点検。**“見直しの儀式化”**が習慣化のコアです。

整理の実例工程(週次)

  1. 収集(30分):目的に沿って作例5点+引用2本だけ拾う。
  2. 要約(20分):テンプレに各3行。重複は削除。
  3. 指示化(10分):チェックリストを1~2項目だけ更新。
  4. 実践(制作):更新項目に焦点を当てた“短尺課題”(例:30分デッサン×3)。
  5. 検証(15分):ビフォー/アフター比較、次回の仮説を1行で追記。

資料の最小構成

  • 参考画像(「基準/準基準/参考」の3列)
  • 1枚テンプレ(要点/使う場面/注意点)
  • チェックリスト(毎週2項目だけ改善)
    増やしすぎないこと。使い続けられる仕組みが最強です。

まとめ

リサーチ力は、“何をどれだけどう良くするか”を可視化する力です。

目的→仮説→多層ソース→選別→要約→指示化→実践→検証のループを回せば、同じ1枚の重みが変わります。

鍵は整理整頓。集めるより捨て、語るより要約し、知識をチェックリストと短尺課題に翻訳する。

今日から、次の1枚の前に90秒の「見直しの時間」を入れてください。あなたの実技は、

確実に伸びていきます。

最後までありがとうございます。