どうも!講師のHouichiです。
今回は「地味な作業に作品の質が隠されている」というテーマで話していきたいと思います。
よく「神は細部に宿る」と言われますが、日常の様々な物事に注意を向ければ確かに
そう思うことはたくさんあります。
古今東西の学者,芸術家,実業家に多く用いられてきたこの言葉の意味としては,
概ね細部まで気を配り、妥協をせずに作り上げ、
作品を含め様々な物事の質を高められることを意味します。
そして細部は一見するとパッとせず、すぐに目に飛び込んでくることはあまりありません。
つまり地味なんですね。
けれども、その地味な部分やことを根気よく意識したり、
取り組んだりすることが作品の質を上げてくれます。
そこで、3つの具体例から、どのような効果を生み出しているのか、見てみましょう。
木材をつなげる「楔」
木材をつなげる「ちぎり」
水彩の水分量
木材をつなげる「楔」

さて、「楔」は木造建築などの骨組み同士をつなげる役割をは対しますが、
これは木材同士が温度や湿度によって適度に伸縮する性質を活かして
骨組みの強度を高めてくれるのですが、それだけでなく、美意識の角度からもやはり、
木だけを使用することで、質的な美しさも保たれているわけですね。
例えば、清水寺には突き出した舞台があり、その下は懸造り(かけづくり)
という柱の部分があります。
↓清水寺の舞台裏の画像
清水寺の舞台裏
縦軸と横軸の木の柱を楔型の木材を使って繋ぎ止めています。
これは正に、木材のみにこだわって建てられた部分で、釘が一本も
使用されていないんですね。
一見つなぎの部分は地味で、骨組みほど目立ちはせず、釘でも遠目から見ても
さほど印象は変わらないですが、近づいた時の趣はやはり、違ってくるはずです。
地味な部分にこだわった優秀な例の一つです。
木材をつなげる「ちぎり」

「ちぎり」は木材の乾燥のストレスによって割れが生じてしまったり、
反りの問題を解決するために用いられます。
ちぎりは木時隙間をつなぐ、三角を2つ繋げたような形をしていることが多く、
中には大きなテーブルに使われる一枚板の割れを補強することにも使われます。
大木の一枚板は派手で模様も美しく、割れてしまうのはとても惜しいのですが、
これらはほんの小さく地味な「ちぎり」という、つなぎ具によってその質が守られるんですね。
ちぎりの例↓
https://www.haburikobo.com/knowledge/k0019.htm
そして「ちぎり」の形も木の繋ぎめと寸分狂わない精度で作らなければならないため、
地味で、集中を要する職人技が必要になってきます。
水彩の水分量

最後に、水彩画を描くときの水分の量の調整も地味でおろそかにしがちです。
ともすれば色の変化に意識が向かいがちですが、その色の濃度や質感を
実現してくれるのは、メディウムである水の量なんですね。
例えば、一度使った筆を洗った後に、軽く切ってそのまま次の絵の具を混ぜるのは
大したことないように見えますが、きちんと筆の中に残っている水の量を把握していなければ、
つけた絵の具がどのような透明度や滲み方をするかは正確には予測できないんですね。
中には、明確に描き分けた部分に水が入り込み、予期しない滲みを作って、
作業が長くなることもあるかもしれません。
なので毎回、地味ではあるんですが、雑巾に筆の水を吸わせて、
筆の水の量をきちんと減らしてから、次の絵の具の色を作るという作業が必要になってきます。
目に留まりにくい地味な部分が、派手で美しい部分を支えていることを
思い出しつつ制作に取り組んでいきたいですよね。
参考にしてみてください。
最後までありがとうございます。